2010/12/17 (Fri) 「おとなしの」サンプル

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■チカナリ。バサラ2ぐらいがベースの毛利さんが真剣な話です。

■■■


 あんたが毛利元就か。
 身の丈を超える碇槍を威風堂々と肩に背負い、銀髪に隻眼の偉丈夫が男を目に止めにやりと笑った。対して毛利元就も痩躯に余る大振りの輪刀を軽々と片手に構えて、貴様が長曾我部元親かと、冷ややかに一瞥したのだった。
 中国と四国の両雄が、顔を合わせたのがこの時だった。ある晴れた、厳島でのことだ。瀬戸海を挟んでそれは長く小競り合いを続けていた両国だったが、大将同士の一騎打ちとなるのはこれが初めてのことだったのだ。
 厳島を舞台として毛利元就が策を仕掛けた。長曾我部元親がそれに乗り、厳島にと現れた。互いに相手の手の内など読んでいることは承知の上での対峙だった。大将同士の一騎打ちは毛利の策のうちではなく、長曾我部元親のやりように毛利方が嵌まった形だった。そのことが長曾我部元親を喜ばせ、毛利元就を不快にさせた。
 だがそれも、打ち合いの末、毛利元就の勝利に終わる。倒れて動かなくなった鬼の姿を毛利元就は見下ろした。
「…まだ息があるか」
 しぶとい鬼だ。元就は冷たい面のままに、まだかろうじて倒れた鬼に息のあることに気がついた。暫し思案するように双眸を眇める。鬼に意識はなく、首を斬りおとすのは容易かった。いまだ輪刀はその切れ味を失ってはおらず、振り下ろせばそれでことは済む。
 アニキー! と絶叫とともに、長曾我部の者らが倒れた男の元にと取りすがる。その者らが顔を上げ、毛利元就、と憎しげに言葉を吐き、刃を向けた。元就様! と声を掛けられたときには、輪刀を振りかざし、男に群がる者らを元就は一掃していた。
 ふむ、と思案し、男の姿を見下ろすと、元就は不意にその足を掴んで、そのまま歩き出した。ずるずると倒した長曾我部元親を引きずって歩き出した主の姿に、一瞬呆気にとられていた重臣たちが、慌てて声を上げて追い縋った。元就様、と掛けられた声に元就は立ち止まり、振り向いた。なんぞ、と声を掛ければ、畏れながら、と頭を下げる部下の姿が目に入る。それでは、本当に長曾我部殿は死んでしまいますぞ。元就は無言で部下の姿を見、それから引きずっていた男の姿を見下ろした。確かに血の跡がついている。
 よかろう。そう言うと、元就は掴んでいた足を無造作に離した。ああ、と周りの者たちが声を掛ける暇もなかった。床に落とされたその振動に、意識のないまま男が呻く。
「持ち帰れ」
 それだけを言うと、元就は既に興味など失ったかのように、踵を返した。元親の意識があれば、俺は物じゃねえと声を荒げるところなのだが、当の本人に意識はなく、主人の持ち物としてただ丁重に長曾我部元親は持ち帰られたのだった。

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