2010/08/16 (Mon) 「花音」サンプル


■チカナリ。大学生の二人のお話。「Forget Me Not」「それから」の後の話です。戦国の元親もまた少し絡みます。

■■■

 不意に元親は目を覚ました。
 すぐ横で人の動く気配に反応したのだ。
 寝起きの重たいまぶたを開いた。朝の光が眩しかった。カーテン越しに日の差し込む部屋の中で、こちらに背を向けている男の姿を元親は見つけた。ちょうど床に降りたところらしい。痩躯だが、無駄のない。この男らしい肉の付き方をした背と腰が目に入る。
 男は元親が見ていることには気が付かないままきょろりと視線を巡らせると、やがていつものように、ひとつ息をついた。
 溜息のようなそれは男の習慣のようでもあり、何度か元親も耳にしたことのあるそれだった。だが、元親は問い質したことはない。
 相変わらずの行為の後の惨状に呆れているのか、それとも、自分とこうなってしまったことを後悔しているのか。
 気にならないと言えば嘘だった。
 だが、だからといって今更やめるという選択肢はこいつにはないだろうし、自分としてもそのつもりもなかったからだ。だから聞いても何も意味などないだろうと元親は自分を納得させている。
 恐らく、男のそれを耳にする度に、自分は同じことを考えている。
 そんな自分がちょっとおかしい。結局のところ、気になっているということなのだが、やはり聞くことなどできそうにもなかった。
 実際に、すべて剥がしてしまった後の服の行く末を元親は気にしたことがない。ベッドの上で耽る行為に巻き込まれぬようにと、すべて床に落としたところまでの記憶はあったが、そこまでだ。
 すべて剥がした、と意識して、思わず喉が鳴った。
 この男の服を一枚一枚剥ぎ取っていく。その行為はひどく元親を興奮させた。それは、この男の纏っている殻を一枚一枚剥いでいくような感覚に似ているのだと元親は思う。
 男はいつも抵抗すべきか迷う素振りを見せて、だが結局服を剥く手を止められたことはない。時折、腕にかかる指は、だが、力は篭められてはおらず、ただ添えられているだけのものに過ぎなかった。
 元親が気まぐれにその手に気を引かれた様子を見せれば、男は小さく息を飲んで、元親を見詰めた。
 常のこの男にはない怯懦な様に、ぞくりと身が震えるのを感じる。自分はそんな性質だっただろうかと自問してみたところでいらえなどある筈もなかった。
 その奥にある柔らかなものはひどく美味だった。
 だが、恐らくは剥がしていくその過程こそ、元親は気に入っているのだ。
 男が身をかがめる。ひとつひとつ服を拾い上げ、身につけていく様が朝の光の中やけに色っぽく思えた。元親は目が覚めても声をかけぬままにその姿を見ている。
 いつまで見ていても、飽きるということがなかった。
 やがて、服をすべて身につけてしまった男の姿を元親は少し残念に思う。また全部剥がしてしまおうかとの不埒な欲求がむくりと頭をもたげて元親は苦笑する。
 この男は、こちらの欲求に案外従順なので、意外に大人しく付き合ってくれるかもしれない。が、そこを突くのは少し可哀想な気もする。
 なにより着るところが見たいからという理由で脱がすというのは、あまりに変態臭い気持ちになった。そもそも自分がこの男の服を脱がすだけで済む筈もなかった。あらわにした肌を食む行為も、同じくらい元親を興奮させるからだ。
 それに、と元親は気がついた、恐らくこちらの視線を意識していない姿がいいのだった。
 自分の見ている前で彼自身に脱いだり着させたりなどをさせたことはなかったが、恐らく互いに意識した状態では、結局のところ行為の一貫と変わりがなくなるだろうと元親は思った。そんなことをして、互いに煽られぬわけがなかった。
 朝焼けや夕焼けのように、わずかな瞬間の自然な光景だから、恐らく、元親はそっとただ感嘆の思いで見ているばかりなのだ。
 そんなことを考えてしまった自分に、元親は思わず溜息をついてしまった。
 案の定、男がぎょっとしたように振り向いて、元親は苦笑する。
「起きて、」
 寝起き特有のというよりも、恐らくは昨晩の無体のせいだろう。いがらっぽく喉に引っかかってしまう声に元就自身が驚いたようだった。調子を整えるように咳払いを繰り返す。
 毛利、と名を呼ぶと、男がこちらを見た。
 手招きをすれば、なんだ? と眉をかすかに潜めて寝台の傍らにと立った。ちょうどいい位置だった。
 元親は腕を伸ばした。その昨晩散々いとおしんだ腰を抱き締める。見上げると、男は対処に困っているといったような顔をして、だが無理に腕を外すことはなく、元親を見下ろした。
「声をかけろ」
「おはよう」
「…そうではなく」
 起きているのであれば、男の言葉はそこで途切れた。

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