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2013/09/27 (Fri) [戦煌ペーパー]なにもない

「passin'away」の前の二人。なにもありませんでした

■■■


 いい夜だった。毛利元就の居城で夜を過ごすなどそうそうとある機会ではなかった。ましてや横に毛利元就がいるとあれば尚更だった。酒を舐めつつ、ちらりと横を伺い見れば、やはり同じように毛利が杯を傾けている。どういう気の吹き回しかねえ、元親は確認すると毛利から目を逸らした。
 あんたもなあ。頭はいいんだから、言い方考えろよ、などと言ってしまったのは、いい感じに杯を重ねた頃だ。言った瞬間にあ、しまったな、と元親は思った。こんなのは毛利との言い争いに発展する最たるものだった。少なくともこんな場で、口に出すことではなかった。元親は思わず顔をしかめる。案の定毛利は少し黙り、言い方を変えたところで実は変わらぬわ、と元親の言ににべもない。いつものことだ。今更、腹も立てる気にもならない。それでもつい、そんなこたあねぇよ、とやはり返してしまうのだ。あんたへの心証だって、変わんだろ、口に出しながらも、ああ、こんな言い方じゃあこいつには何も伝わんねえな、と元親は歯噛みしたい気持ちになった。他人の心証などこの男が気にする筈もないのだ。うまくいかない時に、頭をがしがしと掻くのは元親のくせのようなものだった。それで、毛利の言葉を聞き逃した。え、と思う。顔を上げると、元親を見ていたらしい毛利と目があった。ばちりと戦場でもなくにらみ合うでもなく、まっすぐに目が合うなどそうそうにあることではない。思わず、見つめ合ってしまう。えっと、なんだって? 戸惑いつつ元親が聞き返せば、貴様もか、と毛利が言うのに、なんのことだと理解が遅れたのは、それがおよそ毛利らしい言葉ではなかったからだ。貴様もそうなのか? と重ねられて、お、おう、と元親は思わず顎を引いた。そりゃあなあ、とこれはなんかの策なのかと疑いつつも肯定すると、毛利は元親の顔を見上げ、目を合わせ、ふむと何事か納得したかのように一瞬目を閉じると、わかった、とそう言った。むしろわからないのは元親の方で、え、何がわかったんだ? と涼しい顔の毛利を凝視する。なんだ、と目で伺われ、だってよお、と返す元親はやはり何も考えていなかった、あんたにそんな殊勝な態度をとられると、なんかの策じゃねえか、て、思っちまう、だろと最後まで口にできなかったのは、ああ、情けねぇな、という気持ちが落ちてきたせいだった。毛利は、元親の言葉など気にした様子もなく、そうだろうな、と口元に笑みまで掃き、ただ杯に口をつけた。元親は息を飲む。毛利の態度を策じゃないかと言わしめたのは、自分に自信がないせいだと気がついてしまったからだ。尻込みをしている自分に気がついてしまった。そりゃ、毛利の日頃の行いが悪いせいもある。だが、毛利もそうだと受け入れてしまった。冗談、もしくは繰り言と扱われればまだよかったのだ。だが、そこに本気が混じってしまえば、自分を誤魔化すことができなかった。そうじゃねぇだろと思う。元親は我慢できずに、馬鹿野郎、と叫んで頭を抱えた。なにをしておるのだ貴様、騒がしい、と毛利に小言を言われる。ちらりと様子を窺えば、毛利の様子に変わりはなかった。安堵していいのか焦ればよいのか、元親は黙りこくる。毛利はきれいだ。きれいすぎて泣きたくなった。だいぶよっぱらってんな、と後になれば思うことができた。だが、今は、触れたい、とか、入れたい、とか元親は思う。思ってしまう。その後の記憶がない。朝になって、互いに青ざめた顔を見合わせて、ああ、てめぇもか、と思った。やべぇと焦った分安心して、笑いがこみ上げてきた。そんな元親に毛利が声を荒げて、いつもどおりの朝になった。

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